ほめられた

日曜日、美容院に行った。

 

店長が

「前回ご一緒だったお客様を覚えていますか」

と聞く。

「よく覚えています。この辺りにはいないかんじの人でした」

と即答した。人をよく観察している風な、しゃっきりした老婦人だった。黒髪だったが私よりも年上に見えた。髪の黒いのは染めているからだろうか。

「そのお客様が声がきれいだとおっしゃってましたよ」

「やはり覚えていますか」

と店長が言う。

まあなんとうれしいこと。一度も声を褒められたことがなかった。もっさりして重い口調が自分では気になっていた。

人の声には選り好みがありラジオをよくつけるが声が気に入らないと聞き逃しで他の人が出演している放送に替える。

声音や話し方にはその人の本性が出る気がしている。「もっさりして重い」というのが自分の本性でそれが声音に出ているので自分の声が嫌だった。スッキリさわやかな声音でとかはっきりキビキビとかの話し方が好きなのだ。

「声がきれい」

思いがけないうれしいほめ言葉だった。