朝なのか夕方なのか
数日前のことである。帰宅すると母はデイサービスから先に帰っていた。
冷房を入れに母の部屋へ入って行った。いつもなら帰宅時間に合わせてタイマーをセットしておくのだが二、三日暑さが収まっていた日が続いたのでタイマーをセットしなかったのだ。
母は部屋の中が暑くても自分では冷房のスイッチを入れない。南側全部と西側全部が天井までのガラス戸で温室のような作りである。真冬でも太陽が出ていると夏服を着ていても汗をかく。西側は病院の駐車場で西日を遮るものがない。西日が射して午後からが特に暑くなる。母はそんな部屋へ四時頃帰ってきてすぐそばに扇風機を引き寄せ涼んでいる。
「冷房入れるから」
と声をかける。
「入れて頂戴」
しばらく間があって
「今は朝なの、夕方なの」
と聞いて来た。
「夕方でしょう。さっきデイサービスから帰ってきたんじゃないの」
と答えた。
朝と夕方の区別がつかなくなったのはこれで二度目である。
毎日行っているデイサービスに行って帰って来たことを忘れている。そのくせ朝はデイサービスが待ち遠しくて迎えは九時過ぎなのに八時ごろからまだ来ないから電話でどうしたか聞いてくれと言うのだ。
食事をしたことは覚えている。デイの食事は美味しいという。