あるシニア ①

七十代半ばの女性、腰も背中も真っすぐ。骨太で上背がある。登山が趣味で地元の山岳会に入っていて定期的に登山に行っている。時には海外の山へも行くという。先々週の土曜、大雨の降る中を自宅からジムまで歩いてきたと言っていた。ジムに来るには一級河川に架かっている橋を渡らなければならない。来るときは二十五分位かかり帰りは四十分かかるとだろうと言っていた。山に登ることを考えたら強い雨は何でもないともいう。天気の良い日は自転車で来ていると言う。時間帯にもよるが駅に近い交通量の多い橋を渡り、戦災で焼けるまでお城があったあたりを抜けてくるのである。アップダウンの多い道であり変則な道である。自転車で通るのに不安を感じないのだろうか。

 

今日も雨だったので

「今日も歩いて来たんですか」

かと聞いた。

「こないだは帰りお腹が空いて困ったので今日は車で来たの。遅く来ると駐車場の空きがないから早く出て来たのでもう帰ります」

と言う。

 

週五日連続で来ている。週四回はプールで毎回最低でも3000メートル泳ぐことにしているという。バタフライ、バック、ブレスト、クロールとほぼ休みなく泳いでいる。水は持ってきていない。だから水を飲むために休むということはない。立つのは速い人に先を譲るときにプールのスタート地点で待つかトイレタイムくらいで二時間近くほぼ泳ぎっぱなしである。

 

眼鏡なしで車の運転可。老眼でもない。見た目は黒髪である。髪をかき分ければ白髪はあるんだろうか。サルの蚤取りの様に髪をかき分けての白髪探しなどはできないので確かめようはないが。ご主人は数年前に亡くなって一人暮らしである。子供たちは他県にいるそうである。

 

実家は我が家の近くである。

「兄嫁とは気が合わないから実家にはいかないの」

と悪びれることなく言う。

 

人のうわさによるとご主人とは家庭内別居状態だったそうだ。身も心も頑強である。