「Yの悲劇」を読み終えたその後に

子供向けの「Yの悲劇」を読み終え少年がそんなことをするか。ミルクに毒を入れたのは母なのだろうかと考えつつ夜の九時過ぎに家の門を出た。

 

住宅街の暗い道を歩いて行くと後ろから来た軽自動車がスピードを落として近づいて来る。電信柱と塀壁の間を歩くことにした。十字路が近くなると電信柱はない。軽と私の間を遮るものはなくなった。すると私の方に軽が詰め寄って来た。私を追い越し十字路で左折した。軽が行ったので道を渡る。

 

十字路の右手は細い道を挟んで空き地と広い駐車場である。右に曲がって少し行くと駐車場と同じ側にお稲荷さんがありその先に小学校がある。小学校と道を隔てて公園がある。さらにいくと公園側にお宮がある。お宮は車の行きかう広い道路に面している。

 

左手は道路を渡った角に薄暗いマンションがある。右手の広い駐車場を背にして電信柱の後ろに人がいるようだ。電信柱の陰に隠れているようにも見える。よく見ると子供が自転車に跨ってスマートフォーンを見ている。スマートフォーンの光でマスクを付けた顔が見えた。振り返って確認したがやはり子供である。夜の九時過ぎにマスクをしているのはどうしてかのか。風邪でもひいている。ではなぜ自転車に乗って出かけたのか。

 

さっき読んだ「Yの悲劇」の少年を思い出した。数歩先の角を曲がるまで夜マスクをして自転車に跨った少年は動き出した気配はない。