疲労

母の入院騒ぎで疲れた。私の疲労の大半は母の繰り言を聞かされたためである。

 

早朝六時ごろからから大音量でテレビを見始めた。普段は八時ごろ起き出すのだが。何事かと思う。救急車を呼ぶ。嘔吐と下痢で取り合えず近所の病院に搬送される。

 

先生は

「吐いたものに血が混じっている。食中毒ではないわね」

 

血が混じっていると聞いて深刻な病気を連想するが普段の態度からも今の態度からも深刻な病気に罹る人間のようではない。

 

「大きい病院で検査しなくてわ」

と先生。

 

検査設備の整った病院へ搬送され、午前九時頃病院に着いた。午前と午後検査。

 

病気はそれほど深刻なものではなく、点滴を受けているうちに元気が出て来た。すべての検査が終わり病室に移されてしばらくすると

「病気でもないのになんでここにいるの」

から始まり、点滴の袋から薬が落ちていないの点滴の注射針の入れ方が良くないのと病院の医療行為にチェックを入れ始める。少しずつ点滴の液が落ちていると説明し看護師さんに注射針を確認してもらっても、何度も同じことを繰り返し言う。病名は逆流性食道炎だった。

 

同様に、看護師さんに迫ったようだ。様だと言うのはその場にいなかったから。

 

 

入院に必要なリストを渡された。家に戻り必要な物を揃え、いつも飲んでいる薬を持って病院に。薬局が閉まる前にいつも飲んでいる薬を薬局に届ける。まだ足りないものがあるので買い物に。買い物を終えて病院に向かおうとしら主治医から電話があって退院を勧められた。最初は一週間の入院と言っていたが病院にいると認知症が進むとの説明だった。身体的なダメージよりも認知症の悪化のほうが深刻だと言う。

 

病院へ行き先生にお願いして一泊させてもらった。あの調子で今夜騒がれていたらこっちが参ってしまいます。でも帰りたいと騒いだら夜中に電話が行きますよと言われた。

 

「今夜皆がお見舞いに来ると言っているから今晩一晩は病院にいて」

と飴を与えた。家族の注目を集めたいのだ。晩に子供や孫たちが顔を見せれば今夜は騒がないはず。今日はたっぷり付き合ったので今夜一晩位は入院して下さいと心の中。

 

よく朝九時前に看護師さんから電話で出来るだけ早く迎えに来て下さい。

病院側にすれば早く退院してもらいたい鬱陶しい患者だろう。

 

以前目の手術で別の病院に入院していたときはエレベーターが止まるとドアの外で

「皆さん、ドアの前でお待ち下さい」

「看護婦さん、次のご指示をお待ちします」

と言う母の声が聞こえた。ドアが開くと数人の患者さんたちを引率しているつもりの母がいた。まだ認知症ではなかった。これが本性なのだ。恥ずかしいので知らん顔をして

母の病室へ入った。

 

また他の病院では指図がましく口を出すので医者から

「そんなに元気なら入院の必要はないから退院して下さい」

と言われたこともある。

 

行ってみるとパジャマ姿で車椅子に乗ってナースステーションにいた。迎えに行ったこちらを見た顔つきは尊大で批判がましい。家へ帰るなり病院の値踏みを披露する。青底の病院は二度と行かない。入院中一度も医者が診に来なかった。医者は患者を診るべきだ。偉そうに批判を繰り返す。オイオイその医者の処置した点滴で入院したその日の午後には病院に文句を言えるほど回復したんだよ。

 

今回の私の疲労は病気が重篤でなく安堵したこともある。