嫌な空気
外の品物を選んでいると中からこちらを探るように見ている。
バナナ一房百二十円、二房。リンゴ三つで二百五十円。グレープフルーツ三つで百六十円。カゴに入れる。
品物を持って中に入る。一房百六十円のバナナがある。百二十円は一房にしてもう一房はこれにしよう。百二十円のを一房戻し百六十円のと取り換える。他にないかと店内を見回す。品揃えは乏しい。玉ねぎ、新玉ねぎ、いずれも小粒。他にトマト、大根。キャベツなど。人参も置いてあった。
今日も店には客がいない。会計をする。
「七百二十円になります」
持参した黒い袋を指して
「これに入れるんですね」
「はい、お願いします」
今日はお愛想は言わないだろうと思っていると
「また暖かくなりましたね」
と外の通りをみて言う。こっちを見ていない。そっぽを向いているのだ。
「そうですね」
と答えてそそくさと店を出てきた。
嫌な空気だった。