風呂

風呂に湯を入れる。

48℃で16分。

一人しか入らない。母だけ。

入った後は便で汚れている。何時もじゃないけど。

毎日入る。デイサービスで入浴した日も入る。

 

真冬の夜遅く夜道を歩いてきた。家のドアを開けると中は暖かい。

早速湯に使って暖かさにホッとしていたらプカプカと浮いてきた。

数個の便だった。

身体が冷えている。湯船からは出たくない。

手桶で塊をくみ出しそのまま湯に浸かっていた。

身体が温まるまで入っていた。

シャワーを浴び、石鹸で洗い、出てきた。

 

そんなことがあってもしばらくの間は家の風呂に入っていた。

母は六時ごろ入る。母の後は湯を抜きお湯で風呂場を洗う。

風呂場の洗剤はたっぷり使う。

姪が風呂場の掃除をすることもあった。姪は一回の掃除で洗剤を半分くらい消費した。

姪は帰宅のドアを開けるなり

「お風呂湧いてる」

と聞くのだった。

冷え性には冬の寒さは堪えるのだろう。本を持ち込んで一時間位湯に浸かっていた。

風呂を切望する姪は嫁に行った。

いつしか母以外は自宅の風呂には入らなくなった。

 

寒い夜は暖かい湯に浸かりたいがあの固形物を思い出すとおちおち湯に浸かって居られない。

 

母は九十四歳である。

痴呆の症状はあるが朝起きてから夜寝るまで自分のことは自分でやれる。

食事の用意と食事の後片付け、洗濯は人任せだ。

リハビリパンツを着用している。

 

友人の母も九十四歳だ。

リハビリパンツは必要し。

新聞は声を出して読み、音楽が大好きで歌番組を欠かさず観る。

カラオケには月二回行く。

家事はしない。

痴呆の傾向は全くないそうだ。