従妹③
5月1日の続き
生活のために乳飲み子を親戚の夫妻に託して県外に働きに出た。高校の同級生の紹介で中華料理屋で住み込みで働いた。働き初めて一年もしないうちにそこの主と行方をくらました。駆け落ちしたのだ。一人で留守番をしているとそこの奥さんが東京から訪ねて来た。まだ高校生だった私に詰問した。
「あなたの従妹はどこに行ったの」
そんなこと知るはずもなく
「分かりません」
というと
「知らないはずないでしょ」
一緒に来ていた妹さんも
「そうよ。逃げたりして。おばさんに黙って逃げるはずないわ」
「知りません。母に聞いてください。従妹がいなくなったというのは今知りました。母は知っているかもしれませんが私何も聞かされていません」
と玄関で押し問答をした。従妹への怒りの持って行き場がない分高校生の私に当たるかのようにいつもでも帰らずにいる。従妹の駆け落ちの相手の妻は痩せてやつれたおばさんだった。最初の妻はかなり年上だった。
駆け落ちした人と結局は結婚して一男一女をもうけた。数か月前に亡くなった従妹の旦那が駆け落ちした相手だ。二人でやっていた中華料理店をたたんでから数年後のことだ。