台風19号

早朝、市の防災放送で起こされた。

 

・・・川が氾濫しています。すぐ安全な場所に避難してください。

 

放送は何度も繰り返された。

 

取り合えず大事なものはテーブルの上に上げて二階に避難するか、通帳とキャッシュカードはもっていくかとか、着替えとか洗面道具とか小旅行並みの用意をするのかと、眠気の残る頭で考えた。二階に避難するだけでもあれこれ迷う。他の場所へ避難となるとさらに大ごとだ。

 

その間も避難を促す放送は続いている。しかし外はひっそりしている。避難している様子もない。

 

外を見回ると雨は止んで大風との予報にも拘わらず大風が吹いた様子はない。

 

門扉を締めなかったので庭に空き缶が一つ舞い込んでいた。夜中に空き缶が風に転がる音がしたのはこれだったのか。門扉は風に煽られて倒れると危ないので開けておいたのだ。

 

・・・川の北側の方が低く氾濫するとしたら北側へ水は流れるのが常のことである。ここは南側だし川からだいぶ離れている。氾濫したとされる川とこの地区との間にはもう一本川がある。氾濫した川側が低い。ここまでは氾濫した一級河川の水は来ないだろう。

 

川と反対方向、南の方を少し歩いてみた。途中には避難所に指定されている小学校がある。いつもの日曜日の早朝の風景だ。避難所の小学校の方へ行く人はいない。

 

帰って来て、テレビを付けると他県の川の氾濫を中継していた。夕べは女子アナがカッパを着てはいたが大雨の中で傘を差さずにいた。世間がもてはやす”花の女子アナ”のお仕事とは一味違った活躍であった。テレビでは安全なところにいるようにとアナウンスしつつも報道する人たちの中には安全でないところから中継することがある。

 

氾濫した川の水がこちらまで押し寄せてくることもなく、テレビの氾濫した川の中継では氾濫したと防災無線が報じた近くの川の映像は映らなかった。放送ネタになるほどの氾濫ではなかったのか。

 

我が地区では、台風の被害はテレビ、ラジオで報じられた警告をはるかに下回る結果となった。下回るというよりほとんど被害を受けなかった。

 

避難するようにとの放送はお昼ごろまで続いた。

 

台風19号、かつてない大型台風を経験して分かったのは避難を促されても普段から心がけていないと迅速には行動できないだ。