アジサイ

物置の戸が少し開いている。母が最期までしめなかったのだ。母は雨を避けて物置の出入口に腰を掛けてデイの迎えを待っていた。物置は通りから見える。留守になるのに戸が少しでも開いていては不用心である。

 

戸を閉めて戻る途中、雨の降りしきる庭でアジサイが頭を持ち上げていた。

 

梅雨の時期に青い紫陽花の群れが雨に打たれているのをみかけるがもう九月も半ばである。しかも花群れではなくて一枝だけが辺りを払うように伸びてガクを開かせている。空に向けて雨をうけとめている。

 

車に乗り込もうと通り過ぎたが気になった。数歩戻って良く見ると黄色っぽくて茶色い斑点がある。どういう理由で九月にガクが開いた一枝だけが雨の中に立っているのか。