『名探偵エミールの冒険』はおもしろい
『名探偵エミールの冒険全4巻』
ジョルジュ・シムノン
長島良三訳
読売新聞社
1998年
図書館の棚で偶然見つけ借りてきた。
これがおもしろい。
エミールは探偵社で働いている。所長はトランスだが、それは表向きのこと。探偵社はエミールが仕切っている。
1巻から読み始めて、2巻目の最初「むっつり医者と大きな箱」に入りかけたばかり。
謎解きもおもしろいけど、何よりも魅力的なのは語り口だ。
また出てくる町や通りの名前の響きが町の空気、つまりある情緒を伝えてくる。
シムノンのことばの魅力を言いきれないもどかしさがある。
訳者の長島良三氏が、第2巻の最後にエッセー「シムノンを訳す喜び」でメグレ・シリーズを学生時代初めて読んで、パリへの憧れが掻き立てられたと述べておられるのが、私が感じているおもしろさを代弁してくれている。
パリは今では比較的簡単にいける場所になったが、物理的な距離ではない。
今読んでいる本のことばには、人ひきつける魔法の呪文のような力がある。